名曲を届け続けながら少女から大人へ——。東京女子流の10年

名曲を届け続けながら少女から大人へ——。東京女子流の10年
 
 

知らない恋愛感情をどう表現するか悩んだ初期

 
 
 あれからもう10年が経つ。エイベックスから7年ぶりのガールズグループとして名前だけ先行で発表されていた「東京女子流」。2010年元日よりメンバー情報を1日に1人ずつ公開。すぐにライブを重ね、5月にシングル「キラリ☆」でデビューした。MVでメンバーが使っている携帯電話はまだガラケーだ。
 
 メンバーの年齢は当初非公開だったが、どう見ても幼さが残る。実際、最年少の新井ひとみは小6、最年長の山邊未夢でも中2だった。
 
新井ひとみ「週末はマンションで共同生活をしていて、ライブやリハーサルで疲れて帰ってきても、敷布団を体に巻き付けてお相撲さんごっこをしたりしてました(笑)」。
 
中江友梨「冷蔵庫の中にそれぞれの場所を決めていたんですけど、自分が買ったチーズやヨーグルトがなくなって、よく揉めました(笑)」。
 
山邊未夢「誰かと手を繋がないと歩かないとか、今思えばどうでもいいことをすごく気にしていて(笑)」。
 
庄司芽生「メンバーで話し合いをしても『○○ちゃんと○○ちゃんが一緒にいる時間が長すぎる!』とか、歌やダンスに関係ないことばかり言ってました(笑)」。
 
 エイベックスでは同じ年に「avexアイドルオーディション2010」を経てSUPER☆GiRLSも結成されている。そちらが王道アイドル、東京女子流は昔のSPEEDのようなダンス&ヴォーカルグループを目指す志向が感じられた。実際、ファンクチューンの4thシングル「ヒマワリと星屑」(2010年)から楽曲のカッコ良さ、クオリティの高さが評判を呼ぶ。本人たちはだいぶ背伸びをして歌っていたようだ。
 
中江「『運命』(2013年)は女性の嫉妬心や束縛したい気持ちが前面に出ていて、当時そんな感情なんて知らないから、どう表現したらいいか悩みました」。
 
山邊「『運命』とか『Bad Flower』(2012年)とか、想像はできても、どんな感じでパフォーマンスをしたらいいのか難しくて、ただキメてるだけでした」。
 
 しかし、大人っぽい楽曲をあどけない彼女たちが頑張って歌うのも味になっていた。2012年には早くも日本武道館で単独ライブ。ここで初めてメンバーの年齢が公表され、平均15歳での武道館公演は当時、女性グループの最年少記録だった。翌年にも2年連続で武道館に立つなど順風満帆に見えたが、陰では苦境に陥ったことも。
 
新井「『3rd JAPAN TOUR』(2013年)では、メンバーみんな体調も精神面も低下していて、見せてはいけないライブだったと思います。そこから抜け出せない時期はとてもつらくて……」。
 
中江「私はそのとき急性声帯炎になってしまって、何公演かマイクを持たずにステージに立ちました。精神的にもつらかったし、負担をかけてしまった他のメンバーも体調を崩してしまう。負の連鎖とはこういうことかと。でも、『最後まで絶対やり切ろう!』と全員が強く思って、メンバーの絆は深まった気がします」。
 
 2015年にはメンバーが1人、活動休止から卒業し、4人組となる。
 
山邊「『誰かが辞めたときは解散』と言われていたので、全員辞めるか4人で続けるか……という話になりました。私自身は4人の中で一番ギリギリまで辞めるか悩みましたけど、時間をかけて話し合って、気持ちをひとつに4人でやると決めました」。
 
庄司「4人になって不安もありましたが、自分たちで続けると決めたので、強い意志を持って前を向きました」。
 
 

環境の変化の中で刺さった歌詞に涙

 
 
 そして4人は中学生、高校生……と成長し、パフォーマンスに深みが増していく。
 
山邊「いろいろな経験を踏まえて想像力も膨らんで、曲の世界観をつかめるようになって。『Bad Flower』や『運命』も気持ちの持っていき方が変わり、自分なりに主人公を表現できるようになりました」。
 
庄司「『月とサヨウナラ』(2013年)をライブでやるとき、昔は意識して表情を作っていたのが、年齢を重ねて自然と曲に馴染んでいきました。今は手足の使い方や体のラインをより女性らしく見せるようにしています」。
 
新井「カッコ良く歌うことで精いっぱいだった『Limited addiction』(2011年)も、片想いの恋心を感じるようになって。『溢れないように嘘でごまかす ボクはまだ弱いね』は相手が自分をどう思っているか読めないから、自分も相手を好きな感情を隠している。切り出す勇気がない自分自身に“弱いね”と言っている。そんなふうに自分なりの解釈をして、想いを深めて表現するようになりました」。
 
中江「今でも恋愛感情は難しいけど、なり切るのが楽しくなってきました」。
 
 初期の曲はライブでアップデート。年齢相応になってきた新曲も生まれていく。東京女子流の名曲ラッシュは10年で止まることがなかった。メンバーたち自身の特に思い入れの深い曲はどの辺だろうか?
 
庄司「『Regret.』(2012年)は初めて歌い出しを担当して、ライブでは毎回イントロでドキドキしました。CDを聴くと自分の歌声の幼さに恥ずかしくなります(笑)。時の流れを感じますね」。
 
中江「『きっと忘れない、、、』(2010年)は歌い方に苦戦していた時期がありました。でも、頑張って練習して気持ち良く歌えるようになるとすごく自信が付いて。一番元気をもらえる曲のひとつです」。
 
山邊「『約束』(2013年)はスタッフさんから私たちに贈られた曲。当時の自分たちに当てはまって、今聴いても『頑張ろう』と思わせてくれます。『ずっと忘れない』(2014年)は当時、結成からお世話になっていたスタッフさんの異動など環境に大きな変化があって、『大切なのに気づかないもの 失ってやっとわかるよきっと』とかサビの歌詞がすごく刺さったんです。レコーディング中にウルッときました」。
 
新井「『おんなじキモチ』(2010年)のMVのリップシーンで、張り切りすぎて舌が出ていて、『私の舌は長いのかな』と気にしてました(笑)。この曲は初めて見た方でも踊れる振付で、ファンの皆さんと様々な思い出を作ってきたので、これからも大切にしていきたいです」。
 
 

新曲はイライラを好きな相手に訴えるように

 
 
 今はメンバー全員、20代に入っている。メジャーデビューからちょうど10年経ったこの5月5日、4曲入りシングル「Tokyo Girls Journey(EP)」をリリース。ライブでいち早く披露した「薔薇の緊縛」は緊迫感のあるサウンドに、進むことも去ることもできない恋が描かれている。もがけば縛られた鎖のトゲが深く刺さるよう。今の彼女たちにはわかる心情だろうか? 共感度を5段階で表すと……。
 
山邊「私自身は3ですけど、主人公を想像して演じる分には5。『迷い込むキミという暗闇』というのは、私は音楽とかハマるとそればかり聴きがちなので、共感します」。
 
庄司「自分なりに理解できるので5。『曖昧なRelationship 信じたいモノこそFake』が印象的です」。
 
新井「さらに追及したいので今は4。『報われない想いなら 枯れたいのに 夢見せないで』は刺さります。『恋に発展しないなら終わりにしたい。好きにさせるようなことはしないで!』と主人公が訴えているよう。歌でも『どうして』のところはわかってもらえないイライラ感を出して、相手に訴えるようにしました」。
 
中江「私は3かな。大胆なタイトルだけど、かわいいところもあって。『まるで 友達の延長な キミが くれたキスじゃ満たされない』は、欲張りで女の子らしい感情だなと素直に思います」。
 
 振付は初めてリーダーの庄司が手掛けた。
 
庄司「相手を魅了したくて出す女性らしい部分と、もがき苦しんで少し乱暴な部分を意識しました」。
 
中江「歌詞に沿って、ひとつひとつ丁寧に振りを付けてくれたので、最後まで気を抜かず、見ている人を全員緊縛する気持ちで踊っています」。
 
新井「力を入れずにしなやかに踊って、2番の間奏だけ男性として力強く。メリハリをガッツリ付けていて」。
 
山邊「好きな人に振り向いてほしい気持ちも、ダンスで表現するように心掛けました」。
 
 

いつまでも素直ないい子じゃつまらないでしょう?

 
 
 10年前はあどけなかった東京女子流が、今では清純さに秘めた“毒”を売りにしている。
 
中江「デビュー当時はお人形さんのようなイメージが強かったと思いますけど、お人形さんに感情が入って、反抗的なところも出ました。『いつまでも素直でいい子なだけじゃ、つまらないでしょう?』という。女の子は少しズルくて、振り回しちゃいたいときもありますから(笑)」。
 
山邊「女性だけが持つ怖い部分を曲の中で表現しているのが、女子流の持つ毒です。『薔薇の緊縛』も、束縛より強い緊縛で好きな人を縛り付けてしまう毒が詰まっています。知れば知るほど、メンバーの素の毒も感じてもらえると思います(笑)」。
 
庄司「いい意味で期待を裏切っていきたくて、ライブの構成とかに変化球のようなアイデアを出しては、フフフと楽しんでいるときは毒を感じます(笑)。『緊縛の薔薇』の方向性を決めるために出し合ったキーワードも、毒の塊でした」。
 
新井「ライブでは様々な楽曲の主人公になって歌って踊って、MCになると楽曲から這い上がってきたように和気あいあいと話す。そのギャップに中毒になってしまうものがあるのかなと。聴けば聴くほどハマってしまう底なし沼の楽曲の数々も毒だと思います」。
 
 何とも粋なことを語るようになった4人。東京女子流は2015年にアーティスト宣言をして、アイドルイベントやアイドル誌から撤退。2年後には宣言を撤回してTIFなどにもまた出演するように。その際に語ったのが「アイドルかアーティストかはどちらでもいい。女子流は女子流でしかない」ということだった。
 
 まったくその通りで、女子流にはこの肩書き問題がつきまといがちだが、音楽を聴く上ではアイドルだろうがアーティストだろうが本当に関係ない。良い音楽かどうかだけ。そして女子流は女子流でしか歌えない名曲を10年にも渡り、届け続けてきた。あの幼かった少女たちが、音楽界の荒波を乗り越えて……。そして、彼女たちのjourneyはまだ続いていく。
 
新井「ここで止まっていては、いつか飽きられて手放されてしまいます。定められた地で歩んでいくのも安全で安心ですが、刺激とレベルアップを求めて、最高のエンターテイナーになれるように努めていきます」。
 
 

Text:斉藤貴志
Photo:山内洋枝

 
 
 

「Tokyo Girls Journey(EP)」

 
 
CD+DVD ¥2000+税

 
 
CD ¥1500+税